指定席

特急電車で大阪へ行きました。

切符の指定席へ行くと、
既に座っている隣席の紳士の荷物があります。

「隣、お願いします」
と声をかけて、座らせてもらいました。

紳士は、経済新聞を広げて読んでいて、地震原発の記事が大きく載っていたので、私も横からチラと見ていました。

指定席って、どんな人が隣になるかわかりませんが、人によって居心地の良い悪いってあります。

この日の紳士は、なぜだか不思議と居心地の良い方で、袖ふれあうも多生の縁、なんて諺をふと思い出していました。

朝早かった私は、朝食のサンドイッチをほおばり終えると、携帯ツイッターでニュースを見始めました。

すると、
「ガサガサとうるさくてごめんね」
と紳士が言われました。
新聞をガサガサとめくってらした様でした。


ところが私ったら、携帯の世界に入っていて、大きな物音が何も聞こえてなかったんです。
今どき、ちょっとした心遣いの一言の方に驚いて、
「どうぞよかったら広げて見て下さい」
とお返事しました。

実は、この時におもしろいと感じていたのは、
座席は進行方向を向いていますが、多人数グループの方は座席を反対に向けて座っています。
その方と顔が合うのだけは、なんだか気になるなぁ、と思っていたことでした。

あの人は、私だけでなく、たくさんの方と顔が合ってるんだなぁ、って。笑


そのうちにです、

「あ、雪だ!」
と紳士が言われました。

「あ、本当だ!」
と答えてしまいました。笑

これがきっかけで、ついに紳士と話が始まりました。

話してみると、最初の直感は当たっていて、素敵で礼儀正しい紳士で、私の父親と同じ年なのを知りました。
紳士にも私くらいの娘がいらっしゃるそうです。

年齢を重ねられて、これまで丁寧に人生を歩まれたのを感じるようなお話は、大変心地好いものでした。

私は、
「震災後に、スーパーなどで、買いだめしてしまいたくなる気持ちを感じました。けれど、欲しい時にいつでも手に入るんだ、と言い聞かせました。」
と話すと、

紳士は、
オイルショックの時には、日本人はハワイ旅行でトイレットペーパーをたくさん買って帰ったんだよ。
あの時、イエローモンキーって言われてね。
でも生きるのに必死だったんだろね。」

「不安な気持ちも、信じたい気持ちも、どちらも自分の中にあるんだよね。
自分に打ち勝つというけど、他人と競うという意味ではなくて、自分自身の気持ちに勝つ意味なんだよね。
あなたは自分に勝ったんだね、えらいよ。」
と、思いがけずに言っていただきました。

こんな私でいいのかな?と自己否定してしまいがちな不安な気持ちは、普通で当たり前のことなんだな、と教えて頂いたお話でした。

他にも普段のお話や、宗教のこと、途中で通る奈良の不思議なお話を教えて下さって、楽しいひと時でした。

一期一会、大切にしたいですね。