夫婦3

満月の夜でした。


これまで、老夫婦を心配して、親類や知人などたくさんの方々が、
代わる代わる病室へ見舞いに訪れていました。


皆さんのあたたかい気持ちに支えられ、
たくさんの元気をわけて頂いていました。


そして、それがちょうどプツリと途絶えた晩でした。
妻だけが側に居るのを
まるでわかっていたかのように、
夫はそっと息をひきとりました。




台風の来る前に、無事に葬儀を済ませました。
おかげさまで、多くの皆様に来てもらうことができました。
老夫婦も喜んだでしょう。





ところで、病室で呼ばれ続けていた、
謎の名前の一件ですが、


家系図をさかのぼっていった先に、


記録がないのですが、
同名の女性がどうやら存在していたことがひょんなことからわかりました。


真偽のほどは、やはりわからないのですが、
今回のような、先祖に関係するようなことは、
あるのかもしれないと、私はいつも思っています。


先祖供養などと、よく言われますが、
〇〇家の先祖供養、といった場合に、
存在していたのにもかかわらず、
様々な事情で記録から漏れている人って、確かにいるかもしれませんよね。


戸籍制度もないような古い時代や、
男女間の複雑な関係も、もちろんあると思われますし、
事情があり、事実を隠して重婚するなどもあったという事実は、
別の方の例からも聞くこともできました。


俗にいう、供養がされていないとか、浄化していないというような場合も、


何らかの理由で、その人が生きていたことに気付いて欲しくて顕れる場合があるのかと思います。


有名な小桜姫様も、そのような一例ですよね。


同じ女性としては、なんだかわかる気が致しますね。


私とヒヨコ君も、再婚ですから、後から入籍しましたが、
どこの馬の骨かわからないと、この度亡くなった義父からは、直接の許しは頂けませんでした。


離婚で一人になった自分の息子の先を案じ、世話してくれる嫁は欲しいが、
血や、受け継ぐことにこだわられたんですね。


これを聞いた当初は
沸騰したヤカンのようになっていた私でした。


しかし、その後に、
複雑な人生を受け入れていく覚悟があるかどうかを、
結局は問われているのではないかと、思ったのでした。


人生ってただ経験することなんですよね。
いつの時も、私は過ごす時間に自分を感じて、ただ大切にしていきたいだけです。


こんなことから、私の再婚がはじまったのでした。


最初の頃に、
前妻の子供達と会う機会を作りました。
子供達の母親からは、
ダメ出しされてしまい、
私が会わせてもらったのは、残念ながら最初の機会のみになってしまいました。


一度、夫婦や家族だったメンバーというのは、
戦友のような関係だとかよく言われますが、確かにそうなんでしょうね。
苦楽を経験して絆もできますからね。


私達よりも長い時間を祖父母と過ごして、
思い出のたくさんある前妻の子供達は、
もちろん今回の葬儀には当たり前に呼ばれました。
戸籍は抜けて、私とヒヨコ君のように、やはり新しい形が出来ても、血が繋がっていますからね。


最初に会っておいたことで、私も比較的すんなりと状況を受け入れられました。
会っておいて本当によかったと思いました。
こういった密接な家族関係がある場合には、
ダメ出しした立場の母親も、
子供達が葬儀に呼ばれるわけですから、
揉めないためにも理解を示していかなければいけないでしょうね。
連絡もとりあわなければいけないわけですからね。


結婚や離婚は、大人達の都合で、くっついたり離れたりするので、
子供は慣れない環境へと振り回される立場です。
切り離されたり、くっつけられたり、一方的で理不尽なことですよね。
すべての子供達は、必要に応じて、あたたかく受け入れられて当然です。


けれど、私達は人間ですから感情があります。
頭ではわかっていても、感情的に納得できないことも、やはりあるんですよね。


自分にはこんな感情があるんだな‥というのを、
私もことあるたびによく味わってきました。


こういった複雑になった家族構成では、
古い時代なら、記録されていない女性などが、確かにいても不思議ではないと思いますね。


どの人も、この世に生を受け、だれかれ差別なく、平等に尊い人生で、命なんですけどね。
男女は、役割こそ違いはあれ、命や人生の重さは平等だと言えるようになってきたのはつい最近かと思いますね。


なんだかやるせない気持ちなどが残っていると、
執着になるのも、わかります。
化けて出るのは、なぜか女性ばかりじゃないですか?(笑)
女性って、感情で生きるいきものなんですよね。


先祖という概念は、
その人が一人いなくても、今ここにいる自分は存在できないはずですから、


家系図には、
〇〇家に生まれている人、
〇〇家に嫁いだ女性、
何かの事情で〇〇家に関わったにもかかわらず、入ることを許されず、元の家にも戻ることのなかった人、
などという場合があるということでしょうか。


謎の名前の真偽のほどはわかりませんが、
今回、そんな、様々な人間関係のドラマが繰り広げられているのが
祖先の家系図なんじゃないかと、
改めて思ったのでした。


それに、調べていくと、
養子縁組なんてのは結構普通によくあって、
血のつながりなんて途切れているもんなんですよね。笑
それに、財産も無くしてドラマチックな時代もありますね。笑


私達のこだわりって、いったいどんなことなんでしょうね?
あの世に何を持って帰りますか?
悔いのない人生、
思いを残すことない人生を終えるにはどんな生き方をしたらよいのか?


なんやかんやと、良い悪いと判断することなく、
今ここに在ることに感謝していくべきなんでしょうね。


未熟な自分にも気付かされますね。


だって人間ですからね(笑)


『生まれてきてよかった』と言える最期を迎えるのが私の夢です。